T.H.Rollinsonの「Melodic School for Baritone」の無料ダウンロード方法や楽曲の概要、難易度、作曲家などについて解説しています。初心者の基礎練におすすめのトロンボーン教本です。

無料ダウンロードの方法

「Melodic School for Baritone」は、「国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)」のWebページからダウンロードできます。

ダウンロードアイコン ダウンロードはこちら

「Complete Method」と記載されたリンクをクリックすると、ダウンロードページに移動します。

国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP):「International Music Score Library Project」。著作権が消滅してパブリックドメインとなった楽譜、および著作権者が自由な利用を許諾した楽譜を、インターネット上で無料で公開・共有することを目的としたプロジェクト。

「Melodic School for Baritone」の基本的な情報

T.H.Rollinsonの「Melodic School for Baritone」の基本的な情報は以下の通りです。

  • バリトンやバルブ・トロンボーン向けエチュード集
  • コルネット奏者・作曲家のT.H.Rollinsonが作者
  • 1880年に出版
  • 特定の音型を繰り返すタイプのエチュードが多め(アーバン系)
  • 初心者の基礎練におすすめ

「Melodic School for Baritone」は、バリトン1やバルブ・トロンボーン2といった中音域の楽器向けに書かれたエチュード集です。アメリカのコルネット奏者・作曲家のT.H.Rollinsonによる作曲で1880年に出版されました。

タイトルに「Melodic」と入っていますが、旋律がはっきりしたものより、特定の音型を繰り返すタイプのエチュードが多めです(「アーバン3」に似たタイプ)。

現在は商業出版されていないようですが、パブリックドメインとして公開されています。

次に解説するようにトロンボーン初心者にとって手軽に取り組める教本としておすすめです。

初心者の基礎練におすすめの理由

「Melodic School for Baritone」を初心者の基礎練におすすめするのは以下の理由からです。

  • 構成がわかりやすい
  • 初心者にも吹きやすい音域
  • ヘ音記号のみ
  • フラット系の調性が中心

では、それぞれ見ていきましょう。

構成がわかりやすい

「Melodic School for Baritone」は「メジャースケール」「マイナースケール」「主和音」「インターバル」といったように章が別れており、それぞれの章に短いエチュードがいくつか記載されています。

そのため、それぞれのエチュードが何を意図したものかわかりやすく、基礎的なテクニックを効率よく練習できます。

また、いくつか章をはさんで、それまでに練習したテクニックを応用したエチュードが配置されています。基礎を習得してから応用に進む受験参考書のような構成で、練習しやすいと思います。

「アーバン」を知っている人なら、「アーバンから初心者向けの譜面を抜粋し、総合的なエチュードを付け加えた」といえばわかりやすいかもしれません。

初心者にも吹きやすい音域

エチュードで使われている音域は、基本的に下のFから上のGまでです(まれにハイB♭まで出てくるものもあります)。

音域

音域が限られているため、初心者でも練習しやすいでしょう。

ヘ音記号のみ

エチュードはヘ音記号のみで書かれています。テナーやアルト記号、in B♭譜面などはなく、初心者でもわかりやすいと思います。

フラット系の調性が中心

スケールや和音の章を除いて、フラット系の調性が中心です。吹奏楽で演奏される曲はフラット系の調性が多いので、普段見慣れていて練習しやすいでしょう。

注意事項

「Melodic School for Baritone」の注意点は次の通りです。

  • 利点はそのまま欠点にも
  • 本来はバルブ楽器用

それぞれ解説します。

利点はそのまま欠点にも

上で紹介した初心者へのおすすめの理由は、中級者以上だとそのまま欠点になります。

たとえば、オーケストラではアルト記号やテナー記号も使われます。調性もフラットやシャープ系、両方あまりかたよりなく出てきます。音域も吹奏楽よりもずっと高音が要求されます。しかし「Melodic School for Baritone」ではそういった練習はできません。

そのため、自分のレベルに合わせて別のエチュードも利用した方がよいと思います。とはいえ、それはほとんどの教本にもいえることですから、この本固有の問題というわけではありません。

本来はバルブ楽器用

「Melodic School for Baritone」は本来はバリトンやバルブ・トロンボーンなどのバルブ(ピストンやロータリー)楽器用の教本です。そのため、スライドのポジションの解説などはありません。トロンボーン用のエチュードによく記載されている、代替ポジションの指定もありません。かわりに指番号が載っています。レガートの解説もありません。

そのため、この本だけで練習、というのはおすすめしません。トロンボーン独自の奏法を練習するには、ほかに教本が必要です。

また、バルブ楽器用なのでトリルの練習が記載されています。スライド・トロンボーンでトリルは難しく、ほかの内容とレベルが合っていないので、飛ばしてよいと思います。

これも、この本特有の問題というわけではありません。「コップラッシュ4」や「アーバン」など、ピストン楽器用をトロンボーン用にアレンジしたほかの教本でも、多かれ少なかれ同じ問題があります。しかし、通常、トロンボーン用に編曲する際に少しは修正されるのですが、この本はそのままなので気になるかもしれません。

作曲者Thomas H. Rollinsonについて

Thomas H. Rollinson(トーマス・H・ロリンソン)は1844年にアメリカのマサチューセッツ州に生まれ 1928年に亡くなった、アメリカのコルネット奏者・作曲家・編曲家・指揮者です。

神学校で音楽を学び、卒業後は作曲を行う傍ら、地元の楽団のコルネット奏者・指揮者として活躍しました。その後、音楽出版社で編曲者として働き、千数百曲もの楽曲の編曲と作曲を行いました。また管楽器の教本も数多く執筆しています。5

著作権について

作曲者であるThomas H. Rollinsonは1928年、約100年前に亡くなっており、「Melodic School for Baritone」が出版されたのは1880年です。よって「Melodic School for Baritone」の著作権保護期間は終了し、パブリックドメインになっています。そのため、著作権を気にせず自由に利用できます。

⚠: 著作権については専門家ではないため、明確な保証はできません。ご利用の際は、お住まいの地域のルールをご自身で確認して、自己責任でお願いします。特に編曲されているものや、あとから伴奏やコメントが付け加えられている物は注意が必要です。

  1. バリトン: イギリス式金管バンドなどで用いられる金管楽器。 

  2. バルブ・トロンボーン: スライドではなくピストンやロータリーを使用するトロンボーン。現在の吹奏楽やオーケストラでの利用はまれ。 

  3. アーバン金管教本。金管楽器の定番教本の一つ。 

  4. コップラッシュ「トロンボーンのための60の練習曲集」。トロンボーンの定番教本の一つ。もとはホルン用。 

  5. 参考: ドイツ版Wikipedia