A.Slama「66 Etudes」:トロンボーン用全調性エチュード集
A.Slamaの「66 Etudes」の無料ダウンロード方法や楽曲の概要、難易度、作曲家などについて解説しています。全ての調性でさまざまな難易度の練習曲をそろえたエチュード集です。
無料ダウンロードの方法
「66 Etudes」は、「国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)」のWebページからダウンロードできます。
「Complete Score」と記載されたリンクをクリックすると、ダウンロードページに移動します。 出版社の異なる2種類の楽譜があり、Carl Fischer版の方が楽譜の状態がよく読みやすいです。
国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP):「International Music Score Library Project」。著作権が消滅してパブリックドメインとなった楽譜、および著作権者が自由な利用を許諾した楽譜を、インターネット上で無料で公開・共有することを目的としたプロジェクト。
「66 Etudes」の基本的な情報
A.Slamaの「66 Etudes」の基本的な情報は以下の通りです。
- 19世紀半ばのトロンボーン・コントラバス・ファゴット・チューバ用教本
- 全調性のエチュード集で各調性の中で難易度が変わる
- 難易度は中級者以上
ではそれぞれ解説しましょう。
19世紀半ばのトロンボーン・コントラバス・ファゴット・チューバ用教本
「66 Etudes」(原題「(66 Etüden)」)は、1867年にオーストリアで出版されたトロンボーン・コントラバス・ファゴット・チューバ用の教本です。
作曲者のA.Slamaはトロンボーン・コントラバス奏者・教育者で、特にコントラバスで評価の高い人物でした。そのためか、本書にはコントラバス用の指使いや弓の指示が多く記されています。トロンボーン奏者の場合、これらの指示は無視して問題ありません。
全調性のエチュード集で各調性の中で難易度が変わる
「66 Etudes」の正式な原題「66 Etüden in allen Dur- und Moll-Tonarten」を日本語に直訳すると、「すべての長調と短調における66の練習曲」となります。タイトルの通り、フラットやシャープの数ごとに5曲前後のエチュードが収められている構成です。
このエチュード集の特徴は、同じ調の中で難易度に大きな差がある点です。最初は音階練習に近い簡単な曲から始まり、途中で一気に難しくなったかと思えば、次の調に進むとまた基礎的な内容に戻る……というように、難易度が大きく上下します。
このような構成は少し珍しく、初めのうちは戸惑うかもしれません。
難易度は中級者以上
「66 Etudes」の難易度は中級者以上です。中には比較的やさしいエチュードも含まれていますが、それらは主に音階や和音の基礎練習に近い内容です。単に音階練習をしたいのであれば、必ずしもこの本を使う必要はないでしょう。
コントラバスやファゴット用でもあるためか、トロンボーンでは難しいエチュードもあります。たとえば、エチュードNo.4には次のような大きな跳躍が出てきます。

エチュードNo.4の最後の部分。最大2オクターブの跳躍。
また、よくトリルが指定されていますが、スライドでは無理があるので無視していいかもしれません。
参考演奏
日本ではあまり知られていない「66 Etudes」ですが、海外では一定の知名度があるようです。実際にYouTubeで「slama trombone」と検索してみると、演奏している人が見つかります。しかし、あまりに難しそうなエチュードはアップされていないようです。
実際の演奏ではありませんが、ソフトに全曲打ち込んで演奏している動画が公開されています。練習のときの参考になるでしょう。
作曲者Anton Slamaについて
Anton Slama(アントン・スラマ, 1803~没年不詳)は19世紀オーストリアの作曲家・コントラバス奏者・教育者です。プラハ音楽院でトランペット、トロンボーン、コントラバスを学び、卒業後はプラハ、ブダペスト、ウィーンのオーケストラで活躍したのち、ウィーン音楽院で教授として長年教鞭を執りました。代表的な著作には「66 Etudes」のほかに「Contrabass-Schule(コントラバス教本)」があり、音楽教育の分野でも高く評価されています。1
著作権について
「66 Etudes」の著作権保護期間は終了し、パブリックドメインになっています。
作曲者A.Slamaの没年は不明ですが、生年が1803年であるため、没後150年程度は経過していると考えられます。よって、「66 Etudes」は著作権を気にせず自由に利用可能です。
⚠: 著作権については専門家ではないため、明確な保証はできません。ご利用の際は、お住まいの地域のルールをご自身で確認して、自己責任でお願いします。特に編曲されているものや、あとから伴奏やコメントが付け加えられている物は注意が必要です。
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参考: Wikisource(ドイツ語) ↩
