ドゥメルスマン『カヴァティーナ』:イタリアオペラに影響されたトロンボーン・ソロ曲
ドゥメルスマン『カヴァティーナ』の無料ダウンロード方法や楽曲の概要、難易度、作曲家などを解説。イタリアオペラに影響された声楽的な傾向が色濃いトロンボーン・ソロ曲です。
無料ダウンロードの方法
ドゥメルスマン『カヴァティーナ』は、「国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)」のWebページからダウンロードできます。
「Trombone Part」と記載されたリンクをクリックすると、ソロ譜のダウンロードページに移動します。
国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP):「International Music Score Library Project」。著作権が消滅してパブリックドメインとなった楽譜、および著作権者が自由な利用を許諾した楽譜を、インターネット上で無料で公開・共有することを目的としたプロジェクト。
『カヴァティーナ』の基本的な情報
ドゥメルスマン『カヴァティーナ』の基本的な情報は以下の通りです。
- フルート奏者によるトロンボーン独奏曲
- もう一つの『カヴァティーナ』
- イタリアオペラの影響を強く受けた曲
- 難易度は上級
ではそれぞれ解説しましょう。
フルート奏者によるトロンボーン独奏曲
『カヴァティーナ』は、19世紀前半に活躍したフルート奏者ジュール・ドゥメルスマン(Jules Demersseman)によって作曲された、トロンボーンのソロ曲です。ドゥメルスマンはピストン式トロンボーンのための作品も残していますが、本作はスライドトロンボーンを想定して書かれています。なお、本曲は1877年と1888年に、パリ音楽院トロンボーン科の課題曲として採用されたとみられています1。
イタリアオペラの影響を強く受けた曲
ドゥメルスマンの『カヴァティーナ』は、当時黄金期を迎えていたイタリア・オペラの影響を強く受けた作品です。イタリア・オペラのアリアでは、叙情的でゆったりとした「カンタービレ」に、速く華やかな「カバレッタ」が続き、最後にオーケストラによるコーダで締めくくられる形式が多く見られます2。
本作もこの形式を踏襲しており、前半は穏やかで歌うように始まり、後半は速く、最後はさらにテンポを上げて技巧的で華やかに終わります。
もう一つの『カヴァティーナ』
トロンボーンのソロ曲で『カヴァティーナ』といえば、サン=サーンスの作品がよく知られています。同じフランスで作曲され、パリ音楽院の課題曲として採用された点も共通しています。ただし、音楽的な性格にははっきりとした違いがあります。サン=サーンスの『カヴァティーナ』がトロンボーンらしい響きを持つ曲なのに対し、ドゥメルスマンの作品は、より声楽的な傾向が強く感じられます。
この違いは、作曲された時代背景によるところが大きいでしょう。ドゥメルスマンの『カヴァティーナ』は19世紀半ば、サン=サーンスのものは20世紀初頭の作品です。19世紀前半はイタリア・オペラが隆盛を極めた時代であり、フランスでも「人が歌うように演奏する」奏法がトロンボーンに求められていました。
その後、ワーグナーやR・シュトラウスらの影響によって、トロンボーンはより技巧的で荘厳な響きを担う楽器とされ、現在私たちがイメージする「トロンボーンらしさ」が定着していきます。サン=サーンスの『カヴァティーナ』は、まさにその流れの中で生まれた作品です。
こうした背景を考えると、現代の奏者や聴き手にとって、サン=サーンスの『カヴァティーナ』の方が親しみやすく感じられるのも自然なことかもしれません。ドゥメルスマンの『カヴァティーナ』が演奏される機会が少ないのは、作曲家の知名度だけでなく、こうした時代的な要因も関係しているのでしょう。
とはいえ、演奏機会が減っているからといって作品の価値が下がるわけではありません。ドゥメルスマンの『カヴァティーナ』もまた、現在でも演奏されるに値する曲だと思います。
難易度は上級
ドゥメルスマンの『カヴァティーナ』の難易度は上級です。演奏会で取り上げられるようなソロ曲の中では難しい部類ではありませんが、パリ音楽院の課題曲にもなったぐらいですから、アマチュア奏者にとっては決して易しい作品ではないでしょう。
参考演奏
テネシー工科大学のジョシュア・ハウザー教授(トロンボーン専攻)による『カヴァティーナ』の演奏動画です。「工科」という名前がついていますが、芸術分野の教育も盛んな大学で、同大学名誉教授ウィンストン・モリス氏が創設したテューバ・ユーフォニアム・アンサンブルが有名です。
作曲者作曲者ジュール・ドゥメルスマンについて
ジュール・ドゥメルスマン(1833–1866)は、フランスのフルート奏者、作曲家です。パリ音楽院に入学後、わずか12歳でフルートの一等賞を獲得するなど、その並外れた才能から「神童」として名を馳せました。
作曲家としては、自身の演奏する楽器であるフルートの曲を多く残しています。また、サクソフォンの発明者であるアドルフ・サックスの親友でもあり、まだ歴史の浅かったサックスやサクソルンのために初期の重要な独奏曲を数多く書き、新しい楽器の普及と発展を音楽面から支えました。3
著作権について
作曲者であるジュール・ドゥメルスマンが1866年に亡くなっていることから、著作権の保護期間は過ぎており、その作品は自由に利用可能です。
⚠: 著作権については専門家ではないため、明確な保証はできません。ご利用の際は、お住まいの地域のルールをご自身で確認して、自己責任でお願いします。特に編曲されているものや、あとから伴奏やコメントが付け加えられている物は注意が必要です。
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パリ音楽院の課題曲一覧。ただし、『カヴァティーナ』という曲は複数あるらしく、確定はしていないようです。 ↩
